海外生活コラム

要救助者の希望は尊重されないの?救命活動意思表示はとても大事!

「臓器提供意思表示カード」はみなさんご存じでしょう。ご自身の死後、どういう処置を希望するかの意思表示を行うカードです。保険証などの裏面に記載されており、誰しも一度は考えたことがあると思います。

ただみなさん、疑問に思ったことはありませんか?「死後の処置」は意思表示できるのに、その前段階の「救命活動」において意思表示の手段がないことを。「死後の処置」はもちろん大事ですが、「生きるための処置」はもっと必要じゃないでしょうか?日本国内だけでなく、世界中どこにいたとしても。

今回はそんな疑問に対する投稿です。

救命活動は一刻を争う

もしも道で倒れている人(要救助者)を見かけたとき、「どれだけ早く救命活動をしたか?」によって生存率が大きく左右されます。現在の日本社会では多くの場面で救命活動講習が設けられているため(運転免許講習や企業内あるいは学校)、救命活動を知っている方は少なくないと思います。さらには「AED」という、自動で最も適切な蘇生処置をしてくれる機械も多くの場所に設置されており、救命活動は一般人でも行えるものとなりました。

救急隊員が駆け付けるまで1秒でも早く心臓マッサージや人工呼吸を行うことが重要ですが、それに対して躊躇いがあるのもまた事実です。

「訴えられることはない」と言われても、躊躇いはある

みなさんがいざ救命活動を行う際に、躊躇う理由はいくつかあると思います。

「心臓マッサージの際、要救助者の肋骨を折ってしまうんじゃないか?」

「救命活動をしたにもかかわらず救えなかった場合、殺人犯扱いになるんじゃないか?」

人の命に関わることですから、こういった不安を抱くのは当然です。ですがその件に関しては、まったく心配いらないのです。

管理人がかつて企業内の救命活動講習を受けた際、講師からこう言われました。

「肋骨が折れたとしても、救命活動の結果なので罪に問われることは決してありません。また、救命できなかった場合でも殺人犯になることも決してありません。あなたは救命活動という、非常に勇気のある行動をしたのですから」

 

しかし、以下のような不安も無視できないと思います。

「人工呼吸や心臓マッサージをした結果命は取り留めたが、その後『セクハラ行為をされた』と訴えられた」

この講習を受けていたのはほとんど男性だったので、誰もがこの疑問を持っていたと思います。ですが誰も質問しなかったので、管理人は女性講師に質問しました。すると、講師はこう答えました。

「救助活動に関してはそのような心配はいりません。私は女性ですが、自分が要救助者の立場になった場合には男性にも躊躇わずに助けてもらいたいと思っています。その躊躇いのせいで死にたくはありませんから。命が一番大事なので」

 

その女性講師はそう言っていましたが、それでも不安は完全には拭えません。感じ方はそれこそ、人それぞれなのですから。不安がることはないとわかっていても、実際この状況に遭遇した場合には躊躇してしまうことでしょう。この言葉が「誰にでも100%正しい」とは限らないのですから。

自身で厳密な定義をしておくことが大事

「たとえ1%でも、疑われる要素があるなら避ける」という心理は誰にでも働きます。現場に自分しか救命活動できる者がいなかったとしても、このリスクがあれば要救助者を放置するということも充分起こり得ます。

この躊躇いが文字通り「生死を分ける」状況である以上、誰もがご自身で厳密に定義しておくしかないでしょう。事前に定義しておくことで、万一の状況が起こった場合に救命活動をしてくれる方の躊躇いを少しでも減らすことができるかもしれません。

自分が希望する救命活動は?

まずはご自身が受け入れられる処置を定義しておく必要があります。

  • 人工呼吸
  • 心臓マッサージ
  • AED
  • 全部OK
  • 全部NG

これは最も大事なことです。特に人工呼吸は、救助する側もされる側も躊躇いが生じる救命活動です。絶対にしてほしくないことだけでも、きちんと意思表示をしておくべきです。

まずこれを定義しておくだけでも、ご自身の正直な気持ちがわかると思います。

自分が希望する救命活動者は?

どれか1つでも救命活動をしてもらいたいと定義した方は次に、救命活動に携わる方も絞っておくべきでしょう。緊急時とは言え、他人に触れられるという行為をどうしても受け入れられない方もいるはずです。「どの関係性の人までなら救命活動を受け入れられるか?」ということも、非常に重要なことだと思われます。

以下に具体例を挙げていきます。

Q.異性による救命活動は許容できるか?

救助され一命を取り留めた後、最も揉める可能性があるのがこのポイントでしょう。ここで「NG」を意思表示すれば生存確率は下がりますが、後に揉める可能性も下がります。

これは各自の尊厳に深く関わることなので、ご自身の気持ちに正直になってください。

Q.どの関係性まで許容できるか?

「異性によるセクハラ」の可能性がなくなったとしても、やはり救命活動には抵抗感が伴います。何にしても体は触れられるわけですから、「誰でもOK」というわけにはいかないはずです。なのでここでは、救命活動に関わる可能性のある人間関係を絞る必要があります。

  • 救急隊員
  • パートナー
  • 家族
  • 友人
  • 知り合い
  • 誰でもOK

上から下に向かって親密度が下がっていく例です。救急隊員はもちろん「他人」でしょうが、あなたを助けてくれる可能性が最も高い方です。ここでは関係性を無視して記載しています。しかし「救急隊員でも他人はNG」という方もいると思います。そういう方でも希望を最大限尊重できるよう、関係性を選択できるようにしておきました。

この感じ方も人によってまったく違います。正解は人によって千差万別ですので、ご自身の正直な気持ちを意思表示しておきましょう。

最後に具体的な関係性を記載する

ここまで絞れれば、ご自身がどの関係性の人の救命活動まで許容できるか判明したことでしょう。ですが上記の選択式回答だけでは厳密な意思表示にはならないという方もいますので、最後に具体的な回答を記述しておけばOKです。

A.自由記述式で、自身が許容できる関係性を記入

例:異性なら家族までOK、同性ならば誰でもOKなど

「この人がいい」という希望があれば、具体的な個人名でもいいでしょう。希望は意思表示しなければ伝わりません。

救命活動受け入れ意思表示は見えるように携帯する

これであなたが緊急時に受け入れられる関係性の人が明らかになりました。しかし、それを誰もが見える形にしておかなければ意味がありません。ご自身で意思表示をする物を作って携帯するのがいいでしょう。普段持ち歩くバッグの外側にでも取り付けておけば、財布や身分証明書を探されることもありません。

この意思表示には個人情報を記載する必要はありません。個人情報を判断するのは救急隊員の仕事です。この時点でお願いするのは応急処置の救命活動だけなのですから。

(コピー・DL可)救命活動意思表示カード(1200x630pixel, 300dpi)

(コピー・DL可)Wish to accept life-saving activities card(1200x630pixel, 300dpi)

まとめ

命に関わることだからこそ、事前に受け入れ可能な定義をしておく必要があります。近しい関係性の人に伝えておくだけでは、残念ながら不充分です。その緊急時は、あなたが独りのときに訪れるかもしれませんから。

一命を取り留めた後、せっかく救命活動を行ってくれた方に不信感を抱かないよう、抱かせないよう、誰もが事前に定義しておきましょう。自分の身を守れるのは、やはり自分自身ですので。

この投稿を見てくださった救急隊員の方がおりましたら、なるべく要救助者の希望に沿えるよう少なくとも男女ペアで出動できるようお願いします。そうすればどんな要救助者にも対応できますので。

それではまた!

 

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