前回の投稿で、駅伝の魅力について多少はわかってもらえたかと思います。
「走ってるの見てるだけで何が楽しいの?」箱根駅伝が始まる前に予習
今回は「箱根駅伝」の見どころを各区間ごとに詳しく解説します。この記事を読めば、初心者が押さえるべき「箱根駅伝」の重要なポイントを理解できます。
まずは1日目の「往路」について解説します。
1日目:往路の1~5区
箱根駅伝は全部で10区間あります。「どの区間が重要なの?」と思う方が多いと思います。答えは…「全区間」重要です。
まずは1日目、「往路」の1区~5区を解説します。
第1区(東京大手町~鶴見中継所):21.3km
スタート地点
区間概要:
全体の流れを決める第1区です。午前8時ちょうどにスタートです。
コースの特徴:
「新八ツ山橋」と「六郷橋」にアップダウンがある他はほぼ平坦のコースです。
レース運びの傾向:
各チームが牽制し合い、スローペースになる展開が多いのがこの1区です。各チームの監督も、「この区間はタイムよりも、先頭とどれくらいの差でタスキを繋げるか」ということを最重要視しています。
ですが、最近は少し流れが変わってきました。スローペースになりがちなこの1区において、「エース級の選手を起用し大差を作り出す走りをさせる」という采配をする監督もいます。ですが相当な実力のある選手でないとこの作戦は厳しく、ラスト1~2kmの地点で追いつかれてしまうこともあります。
起用される選手の傾向:
集団走や駆け引きに強く、ラストスパートの勢いがある選手が起用されやすいです。
レースが動くポイント:
スローペースな展開でも、鶴見中継所まで残り3kmの「六郷橋」のアップダウンが、ラストスパートの仕掛けどころになります。毎回必ずここでペースアップが行われ、選手たちがふるいにかけられていきます。
区間賞を取る選手の傾向:
1年生でも区間賞を獲得することがある区間なので、実力よりも勢いのある選手を起用する方がいいのかもしれません。
「大迫傑」選手や「西山和弥」選手も1年生の時にこの区間で区間賞を獲得しています。
現在の区間記録情報:
「吉居大和」選手(中央大学2年時:2022年)の出した「1時間00分40秒」です。
1kmあたりの換算ペースは「2分50秒9」です。
管理人が予想する今年のレース展開:
今年の箱根駅伝で各大学が考えている戦略はたったひとつです。
「駒澤大学の優勝をいかに阻止するか」
なので、駒澤大学の考えと他大学の考えに絞って予想します。
駒澤大学:「僅差でも先頭でタスキを渡したい」
他大学:「順位は問わず、少しでも駒澤に先行してタスキを渡したい」
第2区(鶴見中継所~戸塚中継所):23.1km
スタート地点
区間概要:
各大学のエースが集う区間で、「華の2区」と呼ばれています。午前9時過ぎにスタートです。
コースの特徴:
往路最長区間でかつ、後半に厳しい上り坂が2か所ある区間です。15km過ぎに「権太坂」、戸塚中継所まで残り3kmの地点にある「戸塚の壁」と呼ばれる厳しい上り坂が選手を苦しめます。
レース運びの傾向:
この区間では牽制はありません。各チームの監督も、「この区間はひとつでも順位を上げて次に繋ぐ」ということを最重要視しています。この区間で大きく遅れてしまうと、優勝争いからは遠ざかってしまいます。
ここ数年の傾向では、大逆転劇というより、この2区を失敗せずいかに乗り切れるかという方向にシフトしているような気がします。
起用される選手の傾向:
各チームで最も実力のあるエース選手が起用されます。アフリカ人留学生を要するチームでは、この区間に起用することが多いです。とにかく前を追うことができる選手、ごぼう抜きができる選手が向いています。
レースが動くポイント:
1区で出遅れてしまったチームは、とにかく前半突っ込んで先行するチームに追いつこうとします。しかしそうすると後半にある2か所の上り坂で大きく失速してしまいます。
15km過ぎの「権太坂」からレースが大きく動き始めます。
区間賞を取る選手の傾向:
駅伝のセオリーには、「前半抑えて入って、後半ペースを上げる」というものがあります。このセオリーに従うことで、余裕を持ったペース配分で走ることができます。
ですがこの2区では、とにかく前を追うしかありません。「前半突っ込んで、後半粘る」という、無理をできた選手が区間賞に近づきます。
以前は留学生ランナーが区間賞を独占していましたが、近年では日本人選手が区間賞を取ることも珍しくなくなってきました。
現在の区間記録情報:
「イェゴン・ヴィンセント」選手(東京国際大学2年時:2021年)の出した「1時間05分49秒」です。
1kmあたりの換算ペースは「2分51秒0」です。
管理人が予想する今年のレース展開:
駒澤大学:「僅差でも先頭でタスキを渡したい」
他大学:「駒澤に30秒以上差をつけてタスキを渡したい」
第3区(戸塚中継所~平塚中継所):21.4km
スタート地点
区間概要:
長らく「つなぎの3区」と呼ばれていましたが、近年ではこの区間に留学生やエース選手を置くチームも増えています。午前10時過ぎにスタートです。
コースの特徴:
「遊行寺坂」という坂道を越えた後、海岸沿いを走るコースになります。「遊行寺坂」以外はほぼ平坦ですが、強い海風を横から受けます。
レース運びの傾向:
2区まででうまくいったチームは現状維持で問題ありません。出遅れたチームが流れを取り戻せるのはこの区間が最後になるかもしれません。2区ほどのごぼう抜きはありませんが、それでも下位につけているチームの順位はめまぐるしく入れ替わります。各チームの監督は、「この区間は後続との差をできるだけつけて次に繋ぐ」ということを最重要視しています。この区間を先頭で終えられれば、優勝の可能性が50%くらい見えてきます。
先頭チームがある程度絞られ、この区間で3位くらいにはつけておかないと優勝は厳しくなってしまいます。
起用される選手の傾向:
エースクラスの選手が2人以上いるチームであれば、この区間にもその選手を起用します。近年では留学生ランナーをこの区間に起用するチームも増えてきました。
レースが動くポイント:
下位でタスキをもらったチームが挽回できるチャンスはここが最後になりますので、とにかく前を追うしかありません。しかし前半に力を使ってしまうと、海岸沿いのコースに入った後の海風で失速してしまいます。
力のあるチームの選手は、海外沿いのコースに入ったあたりからペースを上げ始めます。先頭のチームが後続に差を付け始めるのも海外沿いに入ってからです。
区間賞を取る選手の傾向:
駅伝のセオリーに従い、「前半抑えて入って、後半ペースを上げる」ことができた選手が区間賞に一番近くなります。上位でタスキをもらったチームであれば、この区間でそれほど順位が変化するようなことはありません。また、前半無理する必要がなくなるので余裕を持った走りができます。
上位でタスキをもらった選手が区間賞を取る傾向が高いです。
現在の区間記録情報:
「イェゴン・ヴィンセント」選手(東京国際大学1年時:2020年)の出した「59分25秒」です。なんと1時間を切るタイムです。
1kmあたりの換算ペースは「2分46秒6」です。
管理人が予想する今年のレース展開:
駒澤大学:「2位に30秒以上の差をつけてタスキを渡したい」
他大学:「駒澤に少しでも差をつけてタスキを渡したい」
第4区(平塚中継所~小田原中継所):20.9km
スタート地点
区間概要:
距離が他の区間に比べると短めなので、「スピードランナーの4区」と呼ばれています。午前11時過ぎにスタートです。
コースの特徴:
距離は他の区間と比べると短いのですが、視聴者にはわからない細かいアップダウンが連続する難しいコースです。
以前、5区が最長区間だった数年間は18.5kmの最短距離区間でした。ですが、5区の距離が元に戻ってからは以前とほぼ同じ距離に戻っています。
レース運びの傾向:
この区間ではあまり順位変動はありません。ある程度ここまでの区間でできた流れに乗ってレース運びが続きます。下位のチームであれば多少の順位変動は起こり得ます。
起用される選手の傾向:
この区間には怖いもの知らずの1年生や、スピードに自信のある選手が起用されることが多いです。ですが視聴者が考える以上に難しいコースのため、エースクラスの選手を起用するチームもあります。3本柱など、チームの主役クラスの選手が多くいるチームではこの区間に起用して、往路最後のチャンスを手繰り寄せることも可能です。
レースが動くポイント:
2チームや3チームで先頭を争うレース展開になることがよくあります。なので、小田原中継所付近のラストスパート合戦が見どころです。
区間賞を取る選手の傾向:
3区と同じく、「前半抑えて入って、後半ペースを上げる」ことができた選手が区間賞に一番近くなります。上位でタスキをもらったチームであればあるほど区間賞に近づきます。
下位チームですと単独走になりがちですので、思ったよりタイムが伸びないことが多いです。
上位でタスキをもらった選手でかつ、ラストスパートに競り勝った選手が区間賞を取る傾向が高いです。
現在の区間記録情報:
「イェゴン・ヴィンセント」選手(東京国際大学4年時:2023年)の出した「1時間00分00秒」です。
1kmあたりの換算ペースは「2分52秒3」です。
管理人が予想する今年のレース展開:
駒澤大学:「僅差でも先頭でタスキを渡したい」
他大学:「駒澤に1分以上差をつけてタスキを渡したい」
第5区(小田原中継所~箱根芦ノ湖):20.8km
スタート地点
区間概要:
世界でも類を見ない、厳しい上り坂が長い距離を占める超特殊区間です。過去数々の大逆手劇が生まれた区間でもあります。大逆転劇を起こした選手は「山の〇〇」と呼ばれ、一躍スター選手になりました。
コースの特徴:
距離は他の区間と比べると短いのですが、わずか20kmの間に標高差864mを駆け抜ける地獄のようなコースです。国道最高地点を越えた後は下り坂が続きます。
以前、数年間は5区が23.4kmの最長距離区間でした。この時代には5分くらいの差が一気にひっくり返るようなドラマが何回も起こりました。ですが、選手にかかる負担が大きすぎるのと、「この5区を好成績で走っても世界で通用するようなランナーは育たない」とのことで、以前の距離に戻されました。
日本陸連の都合に振り回されるコースです。
レース運びの傾向:
この区間では順位変動がめまぐるしく起こります。ここまでうまくやってきても、ここで失速してしまうと優勝から一気に遠ざかります。
近年では、この5区でも先頭が入れ替わるような大逆転劇は少なくなりました。上り坂に強いスペシャリストがいれば話は別ですが、それほどペースダウンせず堅実に上れれば問題のない区間になっています。
この区間を先頭で走りきり、往路優勝できれば、総合優勝の可能性も80%くらい見えてきます。
起用される選手の傾向:
トップスピードは関係なく、アップダウンに強い選手が起用されます。1年生が起用されることも多く、好成績を収めれば4年連続でこの5区を任されることも多いです。
箱根のスター選手になりたい選手は、この区間を希望する傾向が強いです。
レースが動くポイント:
3km過ぎの地点から10km以上続く上り坂が始まります。いかに平地と変わらないタイムで走れるかがポイントです。上り坂に入ってすぐ、先頭チームが単独走になることが多いです。
国道最高地点を過ぎた後、足が動かなくなってしまう選手も少なくありません。上り坂を越えたからと言って安心できない怖さがこの区間にはあります。
この5区には定点計測ポイントがたくさんありますので、選手の通過タイムを細かくチェックするのもおもしろいです。
区間賞を取る選手の傾向:
上り坂も苦にせず、たんたんと一定のペースを刻み続けることができる選手が区間賞に近いです。前半突っ込むと後半に足が動かなくなりますので、上位でタスキをもらったチームの選手がやはり区間賞を取りやすいです。
過去に留学生ランナーが走ったこともありましたが、日本人ランナーよりもタイムは悪かったです。この区間を速く走るのに、スピードは必要ないことがわかります。
現在の区間記録情報:
「山本唯翔」選手(城西大学3年時:2023年)の出した「1時間10分04秒」です。
1kmあたりの換算ペースは「3分22秒2」です。
管理人が予想する今年のレース展開:
駒澤大学:「2位に1分以上差をつけて往路優勝したい」
他大学:「駒澤に2分以上差をつけて往路優勝したい」
往路フィニッシュ地点
まとめ
1日目の往路は順位がめまぐるしく入れ替わり、目の離せないレース展開の連続です。
2区と5区は数々のドラマが起きやすいので、特に注目の見どころになります。
また、往路5区間のうち3区間の区間記録を「イェゴン・ヴィンセント」選手が保持しています。この超人的な記録を破る選手は現れるのでしょうか?
タイムにも注目して見てください。
次回は復路をご紹介します。
それではまた!
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