男子の長距離種目において、レース展開を説明するために「キロ3分」という言葉がよく使われます。今回はその「キロ3分」という言葉の意味、すごさを説明していきます。
※参考までに、管理人が中学時に出した記録を記載しています。当時の年齢や体格も記憶の限りで記しました。一般レベルの陸上競技部で練習した成果ですので、陸上経験者は比較してみるのも楽しいでしょう。
「キロ3分」とは「1km3分ペース」のこと
陸上未経験者には、「なんのこっちゃ?」と思うような言葉かもしれません。
「キロ3分」とは、「1kmを3分0秒で走るペース」のことを言います。
マラソンや駅伝のレース展開を見る際に、この「1kmを3分0秒で走るペース」より速いか遅いかで、そのレースの動きを解説することが多いのです。
それでは、この「キロ3分」というペースがどれほどのものなのか詳しく説明していきます。
あなたの「1500m」の人生の自己ベストは何分何秒ですか?
男性であれば中学のスポーツテストで「1500m」のタイム測定をしたことがあると思います。女性は「1000m」ですかね?
「うちの学校はシャトルランだった」という方もいらっしゃるでしょうが、その場合は後述する「50m」のタイムで計算してみてください。
「1500m」が「5分00秒」以内であれば間違いなく最高評価
このスポーツテストの「1500m」という種目において、だいたいどの学校の基準でも「5分00秒」より速ければ最高評価の「A」や「10点」が得られたと思います。みなさん、自分のタイムは思い出せましたか?
おそらくですが、この「5分00秒」を切れた方はほとんどいないと思います。陸上部の長距離選手やサッカー部員、バスケ部員を集めた学年全体で1人いるかどうかくらいのタイム設定なのです。
ちなみに管理人は中学の陸上部で中長距離走(800mや1500m)を専門にしていましたが、スポーツテストでの「1500m」のベスト記録は「5分24秒」でした。中長距離走の経験者として誇れる記録ではないですが、参考のために恥をしのんで記載しました。
自分の記録がどうしても思い出せないという方のために、もう少しヒントを出しましょう。「1500m」では、トラックの周回コースをぐるぐる回ったはずです。何周回りましたか?おそらく女子と共通のトラックを使っていた学校が多いと思います。その場合には、男子は7周半、女子は5周回っていたと思います。「そうだそうだ」と思い出した方であれば、もう少しで答えに辿り着けます。
このトラックは1周「200m」です。「1500m」を「5分00秒」で走るには、1周あたり40秒で回り続けなければなりません。「100mあたり20秒」の計算です。この計算で「1km」走ると「3分20秒」のペースになります。おそらく女子の場合には「3分20秒」が切れれば最高評価だったと思います。
どうですか、あなたの記録は思い出せましたか?正確なタイムが思い出せなくても大丈夫です。「このペースを上回るペースで走れたかどうか?」だけ思い出せれば問題ありません。
タイトルの「キロ3分」ペースで「1500m」を走れたとすると、「4分30秒」となります。このペースで走れた同級生はいましたか?おそらく誰もいなかったと思います。
「50m」しかタイム測定したことない人は何を基準にして比較する?
長距離走の自己ベストは覚えていなくても、さすがに「50m」の自己ベストくらいは覚えているでしょう?人生で一番速かったときのタイムを思い出してください。中学でも高校でも、大学でも社会人時でもいいです。思い出せましたか?
50mの自己ベストが「9秒0」だったという方。「キロ3分」ペースは、「あなたの50mの全力疾走状態のまま1km走り続ける」という、とてつもないペースです。
「キロ3分」は100m換算で18秒0、50m換算で9秒0です。つまり50mで9秒を切れない方は、「キロ3分」ペースで走る選手のどの部分の50mだけを競走しても勝てないということです。
あなたが沿道で、マラソン選手と競走したとしましょう。マラソンで40km地点を通過した疲労困憊状態の選手にさえ、今走り出したばかりのあなたが全力で走ったとしても勝てないのですよ!
「キロ3分」というペースがどれほどすごいか、おわかりいただけたでしょうか?
100mを13秒台で走れれば、「キロ3分」くらい軽いのでは?
男子高校生であれば特定の部活に入っていなくても、100mを13秒台くらいで走れる人はザラにいます。それくらいの脚力があれば、たった1kmの距離なら「3分00秒」を切れるだろうと思う方もいるでしょう。ここでまた管理人の実例を出します。
管理人の自己ベスト
陸上の記録はグランドコンディション(アスファルト、土、タータンなど)やスパイクの有無、測定時の年齢や体格によっても大きく変化します。また、手動計測か電気計測によっても異なります(手動計測は電気計測よりも少し速くなるとされていて、正確ではありません)。
管理人には手動計測ではなく、競技場で電気計測された「公認記録」が何種目かあります。スパイクを履き、その反発力を最大限に活かせる公式競技場(タータングラウンド)で計測された記録です。記憶の限り各記録計測時の状況を記載していきます。
100m:13秒5(手動計測)
グランドコンディション:タータン
スパイク:装着
測定時の年齢:14歳2か月
測定時の体格:160cm、45kg
陸上競技場での練習時に出した記録です。「800m」を専門種目として行っていた管理人の「100m」の自己ベストは中学3年春の「13秒5」くらいでした。(電気計測ではおそらく14秒を切るくらいの13秒台後半だと思います)。
ちょうど上記の例に当てはまる範囲内です。さて、この管理人が少しずつ距離を伸ばしていくとどうなったのかを見ていきましょう。
400m:64秒86(公認記録)
グランドコンディション:タータン
スパイク:装着
測定時の年齢:14歳0か月
測定時の体格:158cm、45kg
中学2年の3月末、混成競技記録会で出した記録です。100m換算で16秒2くらいのペースになります。距離がわずか4倍になっただけで、ここまでペースが落ちてしまうのです。
800m:2分17秒25(公認記録)
グランドコンディション:タータン
スパイク:装着
測定時の年齢:14歳4か月
測定時の体格:161cm、46kg
中学3年夏、中学総体での記録です。100m換算で17秒2くらいのペースになります。正直言って、この記録は管理人にとっては出来すぎのような記録でした。高校で競技を続けていても、これ以上の記録は出せなかったと思います。箱根駅伝を走るような一流選手からすればジョギング程度の記録でしょうが、管理人にとっては正真正銘の「人生の自己ベスト」です。
1000m
「1000m」は公式種目ではなく、公認記録が計測できるような大会への参加経験はありません。ですが、上記の「800m」自己ベストペースのまま、「たられば」で残り200mを走れたとしましょう。すると「2分51秒6」という記録になり、多少ペースが落ちたとしてギリギリ「3分」を切れるかなというところです。
ちなみに管理人は練習メニューの一環として1000mを走ったことは何度もあります。ですが、一度として3分を切ったことはありません。管理人の競技レベルが低かったとはいえ、中長距離走を専門にしている中学生でも「キロ3分」を切ることができなかった、という事実があります。
もちろん距離適性やペースの落ち方は各自違いますので断定はできませんが、100mを13秒台で走れる程度の走力では、「キロ3分」を切るのはかなり厳しいといえます。
1500m:4分57秒28(公認記録)
グランドコンディション:タータン
スパイク:装着
測定時の年齢:14歳4か月
測定時の体格:161cm、46kg
中学3年夏、通信陸上大会での記録です。100m換算で19秒8くらいのペースになります。「5分の壁」を切れたのはたった2回でした。1kmの通過タイムは3分15秒くらいです。
3000m:11分52秒21(手動計測)
グランドコンディション:土
スパイク:装着
測定時の年齢:13歳7か月
測定時の体格:154cm、41kg
中学2年秋、新人大会での記録です。100m換算で23秒7くらいのペースで、1kmごとの通過タイムは3分57秒くらいです。
3.2km:11分38秒(手動計測)
グランドコンディション:アスファルト
スパイク:履いてない
測定時の年齢:14歳7か月
測定時の体格:162cm、47kg
中学3年秋、駅伝大会試走での記録です。100m換算で21秒8くらいのペースで、1kmごとの通過タイムは3分38秒くらいです。上記3000m計測時から丸1年経っており、成長は実感できました。
5km:20分50秒(手動計測)
グランドコンディション:アスファルト
スパイク:履いてない
測定時の年齢:13歳10か月
測定時の体格:156cm、42kg
中学2年冬、市民マラソン大会での記録です。100m換算で25秒くらいのペースで、1kmごとの通過タイムは4分10秒です。アップダウンがあったとはいえ、「キロ3分台」で走ることすら不可能でした。
(参考)走り幅跳び:4m18cm(公認記録)
グランドコンディション:タータン
スパイク:装着
測定時の年齢:14歳0か月
測定時の体格:158cm、45kg
上記400m計測時の混成競技記録会で出した記録です。跳躍力は短距離走力に比例します。
(参考)砲丸投げ(4kg):6m94cm(公認記録)
グランドコンディション:砲丸投擲サークル
スパイク:履いてない
測定時の年齢:14歳0か月
測定時の体格:158cm、45kg
上記400m計測時の混成競技記録会で出した記録です。投擲力は上半身の筋肉量に比例します。
一般人にとってこれほどまでに厳しい「キロ3分」を、箱根駅伝ランナーたちは楽々こなしている
5kmを15分、10kmを30分、15kmを45分、20kmを60分と何事もなく通過していくのが、箱根駅伝を走るランナーたちです。ですがこのペースでは「ブレーキ」扱いされてしまうのが、箱根駅伝のレベルの高さを如実に表しています。
エースが集まる「華の2区」では「キロ3分」でもブレーキ扱い?
前々回の投稿で、箱根駅伝の各区間のご紹介をしてきました。
5時間走る「箱根駅伝」の見どころはどこ?各区間の解説(往路編) - 日本人いない場所 (nihonjin-inai-basyo.com)
エースが集まる「華の2区」では、一般人には到底不可能なペースである「キロ3分」でもブレーキ扱いになってしまうのです。
箱根駅伝2区のコースは23.1kmの往路最長区間です。おまけに「権太坂」や「戸塚の壁」と呼ばれる厳しい上り坂が後半に待ち受ける、非常にタフなコースです。競技場のようにスパイクの反発力も使えません。
もしこの2区を「キロ3分」ペースで崩れることなく走り切ったとすると、区間タイムは「1時間9分18秒」になります。ですが最近の箱根駅伝では、「1時間5分台」という驚異的な記録を出す者も少なくありません。
こんな驚異的な記録を目の当たりにし続ければ、「1時間9分台」ではブレーキ(失敗)扱いに見えるのも仕方ないことかもしれません。エントリーリストが確定してからインフルエンザやコロナウイルスにかかり、本調子で走れない選手も毎年います。ハーフマラソンを超えるような距離をそんな状態で、しかも一般人には到底到達できない「キロ3分」ペースで走ったのにブレーキ扱いです。こんな長距離、走り切るだけだって並大抵のことではありません。それが決して遅いペースではない「キロ3分」で走ってブレーキ扱いでは選手がとても可哀想です。脱水症状などの大きなアクシデントがあったわけではありません。ただちょっとペースが上がらなかっただけなのです。
しかし、それだけ日本の大学生のレベルが上がってきたという証明でもあります。
数年後は「キロ2分55秒」で走ってもブレーキ扱いされてしまうような時代になるのでしょうか?
まとめ
箱根駅伝に限らず、ペースが思うように上げられず苦しむ選手はたくさんいます。我々視聴者はタイムでしか選手を評価できないので、その基準を参考にしてしまうのは仕方のないことかもしれません。一流選手が「キロ3分」で走っているとスローペースに見えてしまうのが不思議なのですが。
しかしブレーキ扱いされてしまうタイムでも、一般人が沿道で全力疾走しても追いつけないペースで長距離を走っているのです。そのことを理解していただきたく、今回の記事を書きました。
この記事を読んで、「キロ3分」ペースで走ることがいかにすごいことかを理解してもらえたら幸いです。
次回は『「箱根から世界に!」と言うのなら、箱根駅伝を海外にも配信して!』をお届けします。
それではまた!
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